臨床指標

11)乳腺疾患

11)-1  乳癌(ステージⅠ)の患者に対する乳房温存手術の施行率

  令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度
乳癌(ステージⅠ)の退院患者数 40 22 22 45
乳房温存手術が施行された患者数 25 13 16 22
乳房温存手術施行率 62.5% 59.1% 72.7% 48.9%
解説
 ステージⅠ乳癌(腫瘤径2cm以下、リンパ節転移なし)を中心とする腫瘤径が小さな乳癌に対する手術療法として、乳房温存手術(術後放射線照射を併用)は乳房切除術と同等の成績が得られます。しかし、ステージⅠ乳癌でも乳頭に近い場合や画像で乳管内伸展が疑われる場合は、根治性が低下するため、乳房切除や術後放射線照射が必要です。また、乳房温存術後長期経過中に認められる温存乳房内再発にも注意が必要です。
 当院のステージⅠ乳癌に対する乳房温存手術施行率(48.9~72.7%)は、日本乳癌学会による平成26年症例全国乳がん患者登録調査報告(67.6%)とほぼ同等です。
 当院ではステージⅠ乳癌のみでなく、断端陰性が確保できて納得のいく整容性が得られる場合は、腫瘍の大きさに関わらず乳房温存手術の適応としています。一方で、術後放射線照射が困難な症例(膠原病疾患、間質性肺炎、ペースメーカー挿入側の乳癌症例など)や、温存乳房内再発を回避希望される症例などは、しっかりインフォームドコンセントを行った後に、乳房切除術を行っております。

 
算出方法
 乳房温存手術が施行された患者数 / 乳がん(ステージⅠ)の退院患者数

11)-2  乳癌(ステージⅠ)の患者に対するセンチネルリンパ節生検施行率(75歳以下)

  令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度
75歳以下で乳癌(ステージⅠ)手術あり患者数 30 19 17 37
センチネルリンパ生検が施行された患者数 29 13 16 33
生検施行率 96.7% 68.4% 94.1% 89.2%
解説
 本指標は平成27年度から算出されるようになりました。
 センチネルリンパ節生検は不必要な腋窩リンパ節郭清を省略することを主目的としており、センチネルリンパ節生検で転移陽性であれば腋窩郭清が行われ、陰性であれば郭清は省略されます。リンパ節郭清を省略すれば後遺症としての上肢リンパ浮腫の予防が可能となります。そのため、センチネルリンパ節生検が行われるのが一般的です。

 一方、腋窩リンパ節郭清は直接的に生命予後を左右せず、リンパ節転移の有無を明確にして術後補助化学療法の必要性を判断することに意義があるとされています。したがって、全身状態が悪く術後補助化学療法を行わないと判断される症例には、局所コントロールのための乳房手術のみでセンチネルリンパ節生検を行わないことがあります。
  令和4年度の当院のセンチネルリンパ節生検施行率は89.2%であり、全赤十字病院の平均値86.8%を上回っています。
   
算出方法
 分母のうち、センチネルリンパ節生検が施行された患者数 /75歳以下で、 乳がん(ステージⅠ)、手術を施行された退院患者数