
薬のスペシャリストである薬剤師は、医薬品の適正使用に基づき、個々の患者さんに対し『安全で最適な薬物療法を提供すること』を基本使命としています。
福岡赤十字病院薬剤部では、この使命と当院の理念である『信頼と調和に基づく最良の医療〜地域を尊重、世界を視野に』を実現するために、医薬品の管理・供給ならびに適正使用のための情報収集・分析・提供を24時間365日体制で行っています。
また、薬剤部の理念である『薬あるところに薬剤師あり』のもと、各種専門知識を有する薬剤師が積極的にチーム医療に参画しています。チーム医療での薬剤師の役割は、薬物療法が安全かつ最大限の効果を得られるように症状・効果・副作用をアセスメントすることであり、各チームの薬剤師は医療スタッフと情報共有し、患者さんの症状と薬剤を関連づけながら、副作用などの危険性を理解した上で、安全で最適な薬物療法を提供しています。
薬剤部では、各々の薬剤師が質の高い医療を提供できるよう、幅広い知識向上のための研鑽に励み、各種学会・研修会参加等、スキルアップを支援しています。
薬剤部長:藤永 理恵子
ほか薬剤師:31名
- 医療薬学専門薬剤師研修施設
- がん専門薬剤師研修施設
- 薬物療法専門薬剤師研修認定施設
認定・専門資格 | 認定者数 |
---|---|
日本医療薬学会 医療薬学指導薬剤師 |
1名 |
日本病院薬剤師会 HIV感染症専門薬剤師 がん薬物療法認定薬剤師 日病薬病院薬学認定薬剤師 日病薬認定指導薬剤師(実務実習) |
1名 2名 18名 1名 |
日本臨床腫瘍薬学会 外来がん治療認定薬剤師 |
1名 |
日本腎臓病薬物療法学会 腎臓病薬物療法認定薬剤師 腎臓病療養指導 |
2名 1名 |
日本緩和医療薬学会 緩和薬物療法認定薬剤師 |
1名 |
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定薬剤師 |
1名 |
日本臨床薬理学会 認定CRC |
1名 |
日本臨床栄養代謝学会 NST専門療法士 |
4名 |
日本臨床薬剤師研修センター 認定実務実習指導薬剤師 |
4名 |
日本糖尿病療養指導士 福岡県糖尿病療養士 |
1名 4名 |
日本循環器学会 心不全療養指導士 |
1名 |
日本 DMAT 隊員 | 2名 |
2023年2月1日現在
業務紹介
調剤業務(内服・外用薬・注射薬)

内服・外用薬の処方オーダーは、システム上で禁忌等のチェックを受けた後、薬剤師が調剤時に用法用量・相互作用・検査値・投与期間等の確認をし、必要に応じて処方医へ疑義照会や適切な薬物治療の提案を行っています。
調剤に使用する全自動錠剤分包機や水剤・散剤監査システムでは、固有のバーコードを読み取る認証システムを導入し、調剤過誤防止に努めています。
薬剤部窓口では、投薬業務だけでなく、手術予定の患者さんを対象に『外来常用薬確認』業務を行っています。この業務では、常用薬(処方箋医薬品・OTC等)の情報を持参薬管理システムに入力し、手術前に休薬が必要な薬剤を医師・看護師に情報提供しています。
また調剤室に併設したお薬相談室では、抗がん剤・医療用麻薬・自己注射製剤(インスリン・生物学的製剤等)の指導等も行っています。
注射薬調剤は、注射薬ピッキングマシーンを使用し、処方された注射薬を患者さん毎、施行単位別にセットして病棟へ払い出しを行っています。
注射薬の処方オーダーは、システム上で禁忌や配合変化等のチェックを受けた後、薬剤師が調剤時に用法用量・相互作用・検査値・投与期間・投与経路・投与速度・配合変化等を確認し、必要に応じて処方医へ疑義照会や適切な薬物治療の提案を行っています。
無菌調製業務(抗がん剤・高カロリー輸液)
抗がん剤の調製は、細胞毒性を有する抗がん剤による暴露リスクがあるため、知識・能力を習得した薬剤師が慎重かつ安全に調製します。調製はハザード室の安全キャビネット内で行い、調製者が抗がん剤に暴露されないよう完全な対策を講じています。抗がん剤調製時には、複数の薬剤師で調製過程をチェックすることで、正確な調製を行うことに努めています。
製剤業務(院内製剤)
院内製剤とは、病院独自に調製を行う製剤のことです。患者さんの検査・診断・治療を行う上で市販されていない製剤が必要な場合は、医師の依頼に基づき、専門的知識・技術を駆使して院内製剤を調製します。
医薬品情報管理業務(DI業務)
医薬品に関する最新の情報を収集、内容を評価し、医師・看護師・薬剤師をはじめ、他の医療スタッフに対して迅速に情報を提供しています。
DI業務担当者は医薬品情報の窓口として、院内採用薬の整備、院内スタッフ向けに発行する医薬品情報誌(DIニュース)の作成、プレアボイド報告の集計、薬事委員会の資料作成等を行っています。月に1〜2回発行するDIニュースでは、最新の情報だけでなく、既存の薬に関する情報(同効薬の使い分け等)の再周知にも努めています。
病棟業務での薬剤師業務
当院では、平成25年8月より病棟薬剤業務実施加算を算定しており、現在ICU(集中治療室)を含めた全14病棟に専任の薬剤師を配置しています。
病棟担当薬剤師は、持参薬の鑑別・服薬指導だけでなく、入院患者さんの薬物治療が安全かつ効果的に行われているか、相互作用・検査値・副作用発現等を確認し、必要に応じて処方変更等の提案を行っています。
他にも、回診・カンファレンスに参加することで医師・看護師をはじめとする他医療スタッフと連携し、個々の患者さんにあった治療のサポートを行っています。
服薬指導では入院患者さんに納得して安全な薬物治療を行っていただけるよう、薬の効果・服用方法・副作用などの説明や、患者さんの薬に対する不安などについてうかがっています。
その他、手術室でも毎日薬剤管理業務を行っています。
患者サポートセンター業務
当院では、平成26年1月から手術予定の患者さんを対象とした『外来常用薬確認』業務を行っていましたが、患者サポートセンター設立に伴い、業務を拡大しました。
薬剤師は、手術や検査を受けられる患者さんを対象に、入院前の外来で常用薬(処方箋医薬品、OTC等)、アレルギー、副作用歴などを伺い、その情報を持参薬管理システムに入力することで、手術や検査前に中止が必要な医薬品についての情報を医師・看護師に提供しています。また、必要があれば中止薬に関してかかりつけの調剤薬局へも情報提供し、中止忘れを未然に防いで、患者さんが安心して入院できるように努めています。
チーム医療としての薬剤師の役割
がん化学療法チーム、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)チーム
がん薬物療法は日進月歩であり、その治療が安全かつ適切に行われるため、院内には多職種で構成されたがん化学療法委員会があります。薬剤師は、委員会運営の一員であり、プロトコルの審査や管理、副作用や運用に関する手順書の作成等において重要な役割を担っています。
抗がん剤調剤では、医師・看護師と連携しながら処方内容の監査や調製を行い、抗がん剤の適正使用に貢献しています。
外来化学療法室では、薬剤師1名が常駐し抗がん剤の説明や副作用の確認、セルフケアの指導を行い、患者さんの治療に対する不安を軽減し生活の質を保ちながら治療が進められるよう努めています。
院内感染対策チーム (ICT:Infection Control Team)
院内の感染症に関する情報を収集し、病院全体の感染状況を把握するとともに、その状況に応じた適切な指導・管理を支援しています。主な活動内容は、院内回診参加による感染対策への助言、抗MRSA薬使用患者さんの血中濃度測定・解析(TDM解析)による投与量設定等があります。早期に介入することで、厚生労働省が提示する「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」に基づいた抗菌薬の適正使用の支援を行っています。
栄養サポートチーム (NST:Nutrition Support Team)
入院患者さんの栄養管理を行うため、平成17年4月より薬剤部を事務局として栄養サポートチームを運営しています。チームの薬剤師は、事務局として栄養サポートチームを円滑に運営し、回診では静脈栄養・経腸栄養・薬剤に関する提案を行っています。
現在はICU(集中治療室)にも積極的に介入しており、早期から栄養療法を行うことで、治療の基盤である栄養状態をアップさせ、より良い治療が行えるようサポートしています。
緩和ケアチーム (PCT:Palliative Care Team)
がんやその他の治療困難な病気に伴う「痛み」や「体のつらさ」だけでなく、不安や気分が落ち込むといった「心のつらさ」等、様々なつらさを和らげる活動を行っています。
チームの薬剤師は、入院患者さんの病態や使用薬剤等の情報を集め、医師・看護師と回診を行い、適切な薬剤の選択・用量設定・投与経路への助言・副作用の確認等を行っています。
緩和ケア外来では、初めてオピオイドを導入する際に、定期薬剤やレスキュー薬の使い方、副作用の説明等を行っています。
緩和ケアチームの活動は、院内だけに焦点を当てるのではなく、訪問看護ステーションや医療連携室と協力し、在宅療養や緩和ケア病院への転院等の際に患者さんの希望に合わせた治療ができるよう支援を行っています。
腎移植チーム
腎移植を受けられる患者さんのサポートを医師・移植コーディネーター・検査技師・栄養士とともに行っています。
薬剤師は、腎移植の治療に用いる免疫抑制薬をはじめ、その他の薬、副作用、投薬量の調整など個々の患者さんの状況に沿って支援を行っています。入院中だけでなく退院後も安心して薬物療法を継続していただけるようチームの一員としてサポートしています。
この他にも、せん妄対策チーム、術後疼痛管理チーム、褥創チーム等にも積極的に参加しています。
教育・研修
薬剤部では、新人教育後も薬剤師の継続的な教育を行っています。
定期的に部内勉強会やプレアボイド報告会を行い、薬剤部内全体で情報共有ならびに知識向上に努めています。
院内外で研修会が定期的に行われており、薬剤師として成長できる環境が整っています。
日赤薬剤師会が作成した『病院勤務薬剤師における人材育成標準プログラム』を活用し、薬剤師の資質向上を図り、効率的かつ継続的に知識・技能が習得できる環境を整えています。この人材育成プログラムでは、薬剤師経験年数および役職に合わせたキャリアラダーを使用することで、病院に勤務する薬剤師が習得すべき知識、技能、態度を段階的に評価し、目標を持って業務に取り組む手助けを行っています。
薬剤師(社会人、医療人)としての振る舞いや業務の基礎を身につけることを目的に、独自のカリキュラムに基づいた教育を行っています。このカリキュラムは、自己・指導者が相互に評価することで、薬剤師としての成長度を図り、病院薬剤師としての自立を促します。
