病院概要

院長挨拶

 令和2年以来、当院はコロナ診療と一般診療の両立を目標に掲げ、職員一丸となって地域に必要な医療の提供に全力を尽くしてきました。今年5月、コロナの法的取り扱いが変わり、約3年にわたって続いたパンデミックが漸く終わりそうです。しかし、コロナウイルスが消滅するわけではないため、病院内での対策はある程度のレベルで維持、継続することになると思われます。それでも、法的扱いが変わることによって、一般市民の方々と同様に自粛を貫いた医療人のストレスも大きく和らぐと確信しています。
 これまで、日本ではパンデミック時に安定的な医療提供を継続するための体制整備は完全に忘れ去られていました。私たちはこの3年間に様々な経験をし、多くのことを学びました。国内では、コロナパンデミック発生直後にマスクやガウン等の防護具が不足しました。感染者を受け入れる病院内では、市中の感染状況によって人員、病床等を柔軟に変更できる仕組みが必要でした。地域の病院間では、コロナの重症度だけでなく、透析、妊婦、小児などの併存する特殊病態での役割分担も重要でした。また、多数の感染者を隔離するためにはホテルなどを療養場所とするのは有用な方法でした。今後、コロナパンデミックでの経験を総括し、新興感染症への対応を検討しておくことが必要です。
 令和6年4月から医師の時間外労働規制が始まります。医師の健康を守り医療提供体制の安定化を目的としたこの働き方改革は救急医療に大きな影響を及ぼす可能性があります。私たちは今年度中に医師の働き方改革への確実な対応と併せて、地域における救急医療維持のための対策をしっかりと検討しておく必要があります。加えて、若年人口の減少がもたらす医療現場での人材不足も真剣に考えなくてはなりません。タスクシフト・シェアを推進すると同時に、仕事の効率化が求められています。当院もこれらの対応を着実に進めていきたいと考えています。
 さて、当院の理念は、「信頼と調和に基づく最良の医療 〜地域を尊重、世界を視野に〜」です。私たちは地域の患者さんや医療機関と信頼関係を築き、お互いに理解、協力し合いながら医療を行う姿勢を大切にしたいと考えています。さらに、医療の質、患者の安全を重視することで、当院への信頼をさらに高めるように努めます。ポストコロナ元年の今年度、原点に立ち戻ってこの理念に則した医療を行うことを心がけたいと考えています。
 これからも皆さまのご指導、ご鞭撻を宜しくお願い申し上げます。

令和5年4月吉日

福岡赤十字病院
院長 中房祐司